苦手分野
 
 
 
 
 
 
 
 
それは、和馬たち4人と愛良で仲良くおやつタイムを過ごしていたときの会話。
何気ない実の発言から、それは始まった。
 
 
 
 
 
「愛良ちゃんって受験科目で何が苦手なの?」
「・・・実・・・・・・このたのし〜おやつタイムにそんなこと聞くか〜?」
宗次がうんざりした様子で、真面目な顔して愛良に尋ねた実を咎める。尋ねられた愛良も受験の話題が上って表情を引き攣らせている。
「あ、ごめん。ふと、思ったものだから」
微妙な雰囲気になったことに焦った実が慌てて言い繕うが、むしろそれが愛良の笑いを誘った。
「あはは、実お兄さんが焦ってるのって珍しい〜」
「宗次はいっつも焦ってるけどな」
「そーゆーかずくんもそうでない?」
拗ねたようにそう言ってから、宗次は里奈が作ったクッキーを頬張る。それを見届けてから、和馬は意地悪い笑みを浮かべて横に座る愛良に尋ねた。
 
 
 
 

「それで?愛良の苦手なのってなんだ?」
「え〜?う〜ん、理科、とかかなぁ。算数もモノによっては苦手、かも」
「やっぱり女の子は理系科目が苦手よね。私も化学とか物理は苦手だったもの」
愛良の言葉に里奈が同調して頷く。そんなふたりの会話に、宗次が耳をふさぐ。
「うわ〜、化学だの物理だの、地獄の受験生活の日々を思い出す〜いやだ〜!!」
「・・・・・・確かに、大学受験は戦争だったなぁ・・・・・・」
和馬も遠い目をして呟く中、実がコーヒーを啜りながらさらっと言った。
「そう?僕は結構楽しかったけど。受験生活」
 
 
 
 

瞬間、愛良も含めて固まる空気。
 
 
 
 
 
 

「・・・・・・受験勉強が楽しかったなんて、ぜってー少数意見だからな、実」
「この瞬間、俺たちを敵にまわしたな〜実」
和馬と宗次がジト目で実を見返すが、彼は何食わぬ顔で肩をすくめる。そんな3人の様子を見ていた愛良が、実に視線を戻して尋ねた。
「ねぇねぇ、じゃぁ、実お兄さんは苦手科目とかなかったの?」
「あ、私も気になる。実君って苦手科目あったの?」
「苦手科目・・・・・・」
 
 
 

ふと思案する実を見ながら、和馬がくすくすと笑う。
「そういえば、実は音楽がダメだよな〜」
「え、そうなの?!」
意外な和馬の発言に愛良が実に視線を送る。その和馬は楽しそうに言い加える。
「未だに楽譜がまともに読めないもんな。リズム感ゼロってやつだし。なぁ、実?」
「う、うるさい!」
「へ〜、カンペキな実クンにそんな弱点があったとは」
ニヤニヤと宗次も悪乗りしてくる。意外な弱点が知られて恥ずかしいのか、実はみるみると顔を赤くしてくる。
 
 
 

「宗次だって苦手科目ばっかりでしょ。まったく、いったい何科目赤点とったんだか」
「い〜だろ〜。それでもちゃんと受験には受かったんだから」
「確かに。受験勉強中の宗次は、別人のように勉強してたもんな」
実をからかう宗次を咎める里奈に、彼が口を尖らせて抗議すれば、和馬がそれに同調した。
「そりゃ・・・・・・里奈と和馬と同じ大学に行きたかったし・・・な」
というよりは、行かなければならなかった。
 
 
 
 
 
 
 
大学生になったら犯罪に手を染める。
<失われた誕生石>シリーズを何が何でも手に入れるために。
 
 
 

そう宣言した和馬を友人として、怪盗として、近くで支え、見守るために。
そのためには、和馬と同じ大学で、何をしでかすかわからない彼を見張らないといけなかったから。
だから、宗次は最後の1年は死に物狂いで勉強した。
・・・・・・彼にとって、二度と思い出したくもない1年間だが。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ねぇねぇ、和馬お兄ちゃんの苦手科目は?」
「俺?俺は・・・・・・そうだなぁ、古文とか苦手だったなぁ。あの意味わかんね〜文体とか」
「え〜かずくん、それは違うデショ」
ケラケラ笑いながら宗次が和馬の言葉を遮る。疑問符を浮かべる愛良に、実さえ意地悪い笑みを浮かべて言った。
「そうだね、和馬にはもっと大きな苦手分野があるね」
「ちょ、実?!今はそんな話をしなくても・・・・・・」
「そうかい?でも僕の苦手分野を話してくれたくらいだし、僕だって和馬の苦手分野を話す権利はあると思うけど?」
「それに〜後々隠してて困るのはかずくんだぜ?」
淡々と言い返す実に同調して宗次までがそう言えば、和馬は眉間に皺を寄せて、それでも不安そうにふたりに問いかけた。
 
 
 

「・・・・・・なんで、俺が困るんだ?」
「え〜なになに?何の話〜?」
「それはだなぁ〜・・・・・・」
「愛良!!休憩時間はここまでだ!!ほら、そろそろ塾の時間だぞ?」
「まだそんな時間じゃ・・・・・・て、え、ほんとだ!!」
ニヤニヤ笑いながら、不思議そうに尋ねてきた愛良に答えようとした宗次を制したのは和馬。その和馬の言葉を真に受けずに時計を見た愛良は、大慌てで立ちあがった。
「いっけない、塾の用意しなきゃ。あぅ〜でも、和馬お兄ちゃんの苦手分野が気になる〜」
「愛良ちゃんは和馬の恋人なんだし、ゆっくり知りあっていけばいいんじゃないかしら。ね?」
里奈が愛良と和馬を交互に見ながら優しく、けれど悪戯に笑いながら言った。
無論、里奈もこの場を楽しんでいる人間のひとりだからだ。
 
 
 
 
 
「・・・しょうがないよね、時間もないし・・・・・・。うん、わかった!!和馬お兄ちゃん、今度、じっくり教えてもらうからね!!」
「・・・・・・ぜってー、言わない・・・・・・」
バタバタと慌ただしくリビングを飛び出した愛良の背中に和馬はぽつりとつぶやく。
それを見守るのは、イタズラに成功した子供のようにニヤニヤと笑う3人の友人だ。その3人をキッと睨みつけて、和馬は言い放った。
 
 
 
 
 
 
 
「俺のいないところで、愛良に話すなよ?!」
「「「は〜い」」」
 
 
 
 
 
楽しそうにそう返事する3人を、和馬は疑うように見返すしかできなかった。
 
 
 
 
2010.6.26
 
 
 
 
 
 
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苦手なものってなにかしらみなさんありますよね。
紫月はものすっごく多いですけど。
 
 
和馬の苦手分野については、ちゃ〜んと本編で書こうと思っているので明記はしませんでした♪
でももしかしたら、陰で里奈たちが愛良にばらしているかもしれないですね(笑)
 
 
 
 
 

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