事前学習を忘れずに

 

 

 

 

 
日本中が熱気に沸く、このシーズン。
普段ならさほど興味を示さない者たちも、このお祭りが始まると、たちまちテレビに釘付けになる。
4年に1度の祭典。
俄かサッカーファンを増やす、このお祭り。

 

それは、「ワールドカップ」。

 

 

 

「・・・・・・よっし!!今のはよく止めた!!な、な?」
「ほんと、危なかったな〜。今ので1点入ってたらやばかったぞ?」
「強くなったよね〜このチームも」

 


当然のように集まって、当然のようにいつものメンバーでテレビを囲んでいるのは、いつものこと。
ワールドカップが始まってから、彼らは試合のある日は毎晩和馬の家に集まった。


そして、みんなで見るのだ。
和馬、宗次、実だけではなく、里奈や愛良、そしてロゼも加えて。

 


それでも白熱して観戦しているのは男たちなのだが、愛良たちだって試合が気にならないわけじゃない。今では、日本中が話題にしているわけだし。

 

「ほんとだ〜すごかったね、今のキーパー」
「まさに体当たりって感じで止めたものね。・・・痛そう〜」
愛良がうきうきと里奈にそう言えば、彼女も同意しつつ、テレビの向こうで蹲ったままのキーパーに目を向ける。
「あら、あれくらいなら、たいした怪我にはならないわよ。大丈夫、大丈夫」
「・・・・・・世界中の人間をおまえ基準で計るなよ、ロゼ・・・・・・」
軽い感じで言ったロゼの言葉に、思わず和馬から小さくツッコミが飛んでくる。


確かに、闇世界で「化け物」とすら称されるロゼにとって、ボールに食らいついたキーパーがスパイクで蹴られるくらい、「たいしたことない」のかもしれないが、世間一般的には「たいしたこと」である。
・・・もはや、彼女の基準の中で、「たいしたことある」のは何なのかわからないが。

 


「でも、プリンシアがこんな危ないゲームをすることになったら、私は全力で止めるわよ?プリンシアが怪我をするなんて、嫌ですもの」
「大丈夫だよ〜ロゼ。体育はこんな危なくないもん」

 

愛良至上主義のロゼの過保護な発言に、愛良は噛みあってるんだか噛みあっていないんだかの返答を返す。
けれど、それで安心したのか、ロゼがにっこりと笑ってから再びテレビに視線を戻す。

 


ちなみに、すでにそんな会話など日常になっている男3人は、試合を見るのに必死なため、無視である。
「・・・あ、前半終わった」
「ふぃ〜・・・なんか疲れたな〜」
「・・・何もしてないけどな。気疲れだよな〜・・・」
勝手なことを言い合いながら、3人はハーフタイムに入ったその隙にと、思い思いにテレビから離れる。


「ビール飲むか?冷蔵庫にあったと思うけど」
「お、飲む〜。気が利くね〜かずくんは!!」
「あら、じゃぁ、私もいただこうかしら」
「あ、僕はコーヒーがいいな」
「は〜い、あたしはりんごジュース〜」
「私は実くんと一緒でいいわ」
「・・・・・・パシリか、俺は?」
宗次に尋ねただけなのに、それにロゼから始まり、実、愛良、里奈にまで便乗され、ぶつぶつ文句を言いながらも和馬はキッチンに向かっていく。そんな和馬を見送ってから、ふと、ロゼは宗次に尋ねてみた。

 


「ねぇ、トリック。最近サッカーの試合を見ていて不思議だったのだけど、聞いていいかしら?」
「へぇ?あんたにもわからないことあるわけ?」
「こういう世俗のものは興味なかったから、よくわからないのよね」
「・・・世俗ってあんたね・・・・・・」
がくっとうなだれる宗次と、それに苦笑する実。里奈はくすくす笑い、愛良はわけがわからないまま様子を見ている。

 

「で?なにがわかんないって?」
「そうね・・・・・・とりあえず、<オフサイド>ってなにかしら?」
「・・・オフサイドわからずに、サッカー観戦できるのか?!」
「できてるわよ?」
「さいですか・・・・・・」

 


「え〜でも、あたしもルールよくわかんないまま見てるかも〜」
それまで宗次とロゼのやり取りを聞いていた愛良が、口をはさんでくる。すると、彼女の背後から呆れたような和馬の声が飛んできた。
「おまえなぁ、だったらおとなしく受験勉強でもしてろよ」
「だってだって、みんなが見てるんだもん!!見たいじゃない?!」
「まぁまぁ。それで愛良ちゃん、何がわからないの?」
和馬と愛良をたしなめながら里奈がそう尋ねれば、愛良はテレビを指さして尋ねた。


「イエローカードってなに?出されたらやっぱまずいの?さっきの選手、出されたらアナウンサーの人、騒いでたよね?」
「愛良〜・・・イエローカードもわからずにサッカー見てるのかよ」
「わかんないもーん」
「まぁまぁ、和馬も愛良ちゃんも落ち着いて」
苦笑しながら和馬と愛良をたしなめて、里奈が愛良に向き直る。

 

 


「あのね、愛良ちゃん、イエローカードっていうのは、1回出されたら退場しなくちゃいけないカードなのよ」

 

 

「なるほど」と納得する愛良。「そうだったかしら」と首を傾げるロゼ。
そして、どうしたもんかと固まる男3人。

 


「・・・なぁ、里奈のアレ、天然か?ボケか?突っ込むべきか?」
「彼氏のおまえがわからないもんを、俺たちが判別できるかっての」
「・・・僕、後半戦を一緒に見るのが怖くなってきた・・・・・・」

こそこそ話しあう彼らの様子に、里奈が首を傾げて尋ねてくる。

 

「どうしたの、宗次たち?」
「・・・・・・いや、なんていうかさ・・・・・・」
言い淀む宗次に続いて、もはや拝むように和馬は女性3人に告げた。

 


「・・・頼むから、正しい知識を事前学習してくだサイ・・・・・・」

 


果たしてそれが、ワールドカップ閉幕までに間に合うかどうかは不明であるが。

 

 

 

2010.7.10

 


 

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ちょうど世の中がワールドカップで盛り上がっていたので、こちらもその話題にしてみました(笑)

 

ロゼって変なところで知識が不足していそうだな、と思い(笑)

そして、当然いつもの4人は和馬の家で集まっているだろう、ということで。

 

こういうタイムリーなものを題材にできると、ちょっと満足です(笑)

WEB拍手用なので、サイトにアップするにはすでに遅いですけど(汗)

 

 時系列的には、愛良がまだ小学生の頃なので、「受験勉強」とかいう単語まで出てます。

今となっては懐かしいとすら思いますが(笑)2010年7月時点では、まだ愛良は小学生でしたからね〜。

 

 

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