夏休みの肝試し?

 

 

 

 

 

夏休み。
学校も休みで、学生にとっては、天国のような毎日。
でも、学校に取り残された生き物たちの世話はしなくてはいけなくて。

 


飼育係の愛良は、そんな面倒な任務を抱えていたのだが、その夜、教室内にうっかりすっかり忘れ物をしたことを思い出したのだ。

 

 

「・・・和馬お兄ちゃん・・・・・・」
「ん?」
「・・・お願いがね、あるんだけど・・・・・・」
「・・・・・・一応、聞くだけ聞いておこうか」
「一緒に、小学校まで来て?」
「へ?明日?」
「ううん、今」
「今ぁ?!何時だと思ってるんだよ、もう夜の9時だぞ?!」
「だって〜、忘れ物しちゃったんだもん〜」

 

半泣きになりながら、愛良は和馬に訴える。
こんなとき、ロゼが居れば、鶴の一声でそのまま愛良の願いどおりになるのだが、そのロゼは今夜は仕事のため、不在。
だからこそ、愛良の頼みの綱は、和馬だけなのだ。

 


「忘れ物って・・・・・・明日じゃだめなのか?」
「明日じゃ遅いもん」
「何忘れたんだよ?」
「・・・・・・サイフ・・・。あの中に定期もあるから、あれがないと、明日の朝一の塾に行けないよ〜」
「だったら朝取りにいけばいいだろ?」
「・・・・・・それだったら、忍びこめないじゃん。面倒くさい手続きとかして、やっと教室に行けるんだよ?そんなことしてたら、塾に遅刻しちゃう」
「・・・忘れた愛良が悪いんだろ?」
「だから、取りに行くのを手伝ってってお願いしてるんだってば〜和馬お兄ちゃん〜!!」
両手を合わせて、拝むように頼みこんでくる愛良。

 

和馬としては、裏稼業で怪盗なんてやってるから、夜の学校に忍び込むことくらいわけないのだが、和馬が怪盗だということを知らない愛良を少しはいじめたくなるのも、いたずら心。

 

「え〜どうすっかな〜」
「お願いします〜!!ひとりじゃ怖いもん〜!!」
「あっはっは。怖いって、夜の学校が?」
「わ、笑いごとじゃないもん!!夜の学校は不気味だもん!!」
「はいはい。わ〜かったよ。今回だけだぞ、忍び込むなんてこと、手伝うの」
「ほんとに?!やった〜ありがとう!!」

 

本当は朝一番に小学校の守衛に電話をかけて、事前に許可を得ておけば簡単に学校に入れそうだが、あえて夜の学校に愛良と共に忍びこむことを選んだ和馬は、間違えなくこの状況を楽しんでいたりするのだ。

 

 

 


「・・・・・・うわぁ・・・・・・やっぱり、不気味・・・」
「ほら、いいから早く案内しろって。どこなんだよ、愛良の教室は」
「あ、えっと、こっち・・・・・・」
締めきった校門をよじ登って越えて、真っ暗な校舎の中に侵入した愛良と和馬。
夜の学校という不気味な雰囲気にびくびくしながらも、和馬とスリリングなデートをできて喜んでもいる愛良。
和馬はというと、夜の学校以上に不気味で物騒な建物をいくらでも侵入してきているので、今更この状況をなんとも思っていないのだが、それにびくびくしている愛良をからかうことにちょっとしたおもしろみを持っていたりする。

 

「やっぱ、小学校ってなんかちっちゃいよな〜」
「なにそれ〜!!ちっちゃくなんかないよ!!」
「いんや、ちっちゃいって。愛良もそのうち大人になってから小学校を訪れればわかるって」
「・・・夜中に?」
「お好きにどうぞ?」
「いじわる〜」
「なんで俺が責められるんだよ」
そんな軽い会話を続けながら、ふたりは愛良の教室に向かう。誰もいない小学校の廊下は、たとえ和馬が一緒でも愛良にはやっぱり不気味で怖くて、思わず和馬の手をぎゅっと握りしめてしまう。


「なんだよ、怖いのか?」
「・・・だってぇ・・・・・・」
「夜の学校って肝試しの定番だよなぁ。七不思議とか、怪談とか、いっぱいあるよな〜」
「やめて〜!!今それを言わないで〜!!」
「あっはっは!!おもしれぇ〜」
「なんで和馬お兄ちゃんは平気なのよ〜!!」
「大人だからです〜」

 

本当は、怪盗だから、なのだが。
怪盗が夜の建物を怖がっていたら仕事にならない。
夜の闇を利用して怪盗を殺そうとする連中すらいるのに、ユーレイが怖くて建物に逃げ込めなかったら、こっちの命がない。

 


「ここ、この教室」
「んじゃ、早く忘れ物とってこい」
「うん!!・・・あ、でも和馬お兄ちゃんも一緒に教室の中にいてね?」
「はいはい」
愛良が自分の机をあさったりしている間に、和馬はぐるりと教室内を見渡す。
これまた怪盗業のおかげで、夜目が効くようになった彼は、月明かりだけでも教室内が結構しっかりと見渡せたりする。
その中で、教室の片隅に無造作に置かれた黒布を彼は発見した。
「・・・・・・これって・・・・・・」

 

 


「あ、あったー!!あったよ、和馬お兄ちゃん!!」
あちこち探し回った挙句、教室の水槽の横にサイフを置き忘れていたのを発見した愛良は、それを抱え持って、和馬に報告するつもりで振り返る。
ところが、教室に一緒にいたはずの和馬の姿がない。
「・・・・・・あれ・・・和馬、お兄ちゃん・・・?」
急に真っ暗な教室内にひとりきりになってしまい、声が小さくなってしまう愛良。
いるはずの和馬を呼んでみるが、返答がない。
「も、もぉ〜、お兄ちゃんってば、どこに隠れちゃったの〜?」
わざと明るい声で和馬を探すように教室内を動き回るが、それもびくびくしながら。
早く和馬を見つけ出して、この不気味な場所から遠ざかりたい思いでいっぱいだ。

 


「ちょ・・・和馬お兄ちゃん・・・?どこ〜?」
愛良が、不安で泣きだしそうになったそのとき・・・・・・
「愛良〜・・・」
「和馬お兄ちゃん?!」
聞こえた愛良を呼ぶ声に、彼女はためらいなく振り向く。
すると、目の前から大きな黒い布のおばけが、愛良に襲いかかってきたのだ!!

 


「い、いやーーーー!!!!」

 


「こ、こら、愛良、静かにしろって!!見つかるだろ!!」
泣き叫ぶ愛良をたしなめるように、黒い布がばさりとめくりあがり、現れたのは和馬。
和馬は、先ほど教室内に無造作に放り出されていた黒布を見つけて、それを被って愛良を驚かせただけなのだ。
まさか、こんな大声で泣き叫ばれるとは思いもしなかったが。

 

「か、和馬お兄ちゃん・・・・・・」
「そうそう。この黒い布を被っただけだって」
「・・・・・・それ、クラスの男子が夜叉のマネするのに使ってる、夜叉のマントなんだけど」
「あ、な〜る。それでこんなでかい黒布なんだな」
「なんでそれであたしを驚かすのよ〜!!お兄ちゃんのバカ〜!!!」
「いや〜、いい反応が返ってきて、俺は楽しかったけど」
「も〜〜!!!お兄ちゃんなんてキライ〜!!!」
「あっはっは」

 


ぽかぽかと愛良は八つ当たりするように和馬を殴るが、その和馬は笑い声をあげているだけだ。
「で?見つかったのか?」
「うん、見つかった」
「んじゃ、帰るか。楽しい思いさせてもらったし」
「・・・・・・あたしは楽しくなかった」
「ほぉ?でも、俺はおまえの付き添いで来たんだけど?」
「う・・・・・・。あ、ありがとうございました」
「よろしい。んじゃ、叫んだところで喉渇いただろうし、アイスでも買って帰るか」
「わ〜い、帰る帰る!!」
「ゲンキンな奴だなぁ。さっきまで泣き叫んでたかと思ったら、今度はスキップかよ」
「早く、お兄ちゃん!!さっさと帰ろう!!」
「へいへい」

 

 

それは、真夏の出来事。
愛良と和馬の、夜の小学校で行われた、秘密の肝試しもどきの話。

 

 

2010.7.26

 


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夏休みといえば肝試し!!

みたいに思い、せっかくの夏だし、夏らしいテーマで小話を書こうと思い、こうなりました(笑)

 

 

でも実際、夜の学校って怖いですよね(汗)

肝試しってちゃんとやったことないですけど、やったら絶対怖い気がする・・・・・・。

 

吉崎君がいつもふざけて夜叉の格好をしている小道具で、まさか本物の夜叉が愛良を脅かすために使うとは、彼も思うまい(笑)

 

 

夏といえば、で、花火ものとか海ものとか、色々ネタはあったのですが、ま、来年に持ち越しってことで(笑)

 

 

 

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