アレの使い道

 

 

 

 

 

「さて、これをどうするかね〜・・・」
和馬は手にもったそれをピラピラと振りかざす。

 

「特に欲しい物なんてないけど、買わないなら買わないで、愛良がうるさそうだしなぁ〜」
リビングのソファーにごろん、と横になると、手に持っていたそれがひらり、と床に落ちる。

 

それは、一枚の図書カード。

 


これは、先日行われた、和馬のバースデーパーティーで、ロゼが和馬にプレゼントしたものだ。<表向き>に。
本当のロゼからのプレゼントは、怪盗として彼が求める情報のほんの一部を垣間見せた、マイクロチップ。
それを隠した封筒を、ロゼは愛良に「ナイトが欲しがっているものなのよ」と言いながら渡してきたのだ。

 

怪盗夜叉が和馬だと知らない愛良は、当然、その封筒の中に入っていた、<表向き>の図書カードが和馬の欲しいものだと勘違いをする。
どうやら自称・和馬の恋人である愛良は、彼のプレゼントに相当悩んだらしく、和馬が欲しいと思うものが気になっているらしい。
それからというもの、「あの図書カードで何を買ったの?!」を毎日のように愛良に聞かれるようになったのだから、和馬はいい加減げんなりしてきた。

 


「・・・いっそ、京都旅行のガイドブックでも買おうかな」
5000円分も。


ロゼが提示してきた情報先は京都、嵐山。
どの道、和馬が知りたい情報がある本は、図書カードで買えるような本屋にはないものばかり。
だったら、近いうちに京都に行くことになるわけだし、ガイドブックを買い漁ってもいいかな、と思い始めていると・・・・・・

 

 

「あらあらナイトってば、人からもらったプレゼントをこんなところに置いちゃって」
諸悪の根源・・・・・・いや、和馬の頭痛の種が、彼にそう言う。
金髪碧眼、まるでモデルのようなスタイルと美貌を持ち、和馬をなぜか「ナイト」と呼ぶ、闇世界の悪魔。
この家では「ロゼ」と名乗り、にこにこと笑みを絶やさず平和・・・・・・そうに過ごしているのだが・・・・・・むしろそれが不気味に感じるときもあったりする。

 


「・・・落ちたんだよ」
床に落ちた図書カードを拾いながら、和馬は身を起こしてロゼを見上げた。
どこに買い物に行って来たのやら、買い物袋をぶらさげたロゼが、にっこりとこちらを見て笑っていた。
「なにをナイトは悩んでいるのかしら?」
「・・・コレの使い道。愛良が何を買うんだってうるさいからな」
「あら、ナイトは欲しい本はないの?てっきり、知識不足、経験不足、世間知らずなあなたのことだから、学ぶ本はたくさんあるかと思ったのに」

 

ズバズバと和馬を突き刺すような嫌味な言葉を素敵な笑顔で告げながら、ロゼは買い物袋から買ってきたものをテーブルに広げている。
「・・・そりゃたしかに、そうなんだけど・・・」
ロゼから見れば、たしかに和馬は知識不足・経験不足・世間知らず、なのだろう。
特に、表世界というよりは、裏世界の中で。

 

「・・・でもな、そういう知識を得るための本を買った、なんて愛良に言えるか?」
「そうねぇ・・・プリンシアには難しい話かもしれないわね」
がさがさと買ったものを広げながら、ロゼはあっさりと認める。
・・・・・・その買ったものというのが、またお菓子の材料ばっかりであることで、すでに和馬は頭痛がしてきているのだが・・・・・・。

 


「あ、そうだわ」
「ん?」
「欲しい本がないなら、スイーツの本を買っておいてちょうだい」
「・・・・・・なんで?」
「レパートリーを増やしたいじゃない?」
「そうじゃなくて。なんで俺があんたにプレゼントされた図書カードで、あんたに本を買わなくちゃいけないんだよ」
すでに不毛な会話になりつつあるのを自覚しつつ、あえて和馬はロゼに対抗してみる。
けれど、和馬のそんな抵抗などどこ吹く風のロゼは、さらりと答えた。

 


「決まっているじゃない?プリンシアにもっと色々なスイーツを食べてほしいからよ?プリンシアが、私のスイーツはおいしいって言ってくれるんですもの」
それはそれはうれしそうにロゼはそう言う。
たったひとりの小学生の少女にお菓子を振舞い、それを褒められて喜んでいるこの金髪外人美女が、じつは裏世界の大物殺し屋、<ノワール>というコードネームを持っているスナイパーだなんて、詐欺としか言いようがない。

 


「・・・っていうか、ロゼの料理は食えたもんじゃないから、スイーツならうまいって意味じゃないのか?!」
「何か言ったかしら、ナイト?」
「・・・いえ・・・」
「そう。ならいいわね?スイーツの本をあと2,3冊、見繕っておいてちょうだい?もちろん、私が持っていないものをね?」
「つぅか、それ、決定事項なのか?!」
「そうよ?ナイトも食べるでしょう?」
「・・・・・・食べるけど・・・・・・・・・」
「じゃぁ、決まりね」
にっこりと勝利の笑みを浮かべるロゼ。
というよりは、彼女に勝てる者などいないと思うのだが。

 


かくして、「和馬が欲しいと思われている」図書カードの使い道は、
・京都の地図  1冊
・スイーツの本  3冊
という結果で終わったのであった。

 


そして後日、首を傾げた愛良に
「和馬お兄ちゃん、スイーツの本が欲しかったの?」
と問われ、遠い目で乾いた笑いを浮かべた和馬の心境を知る者はいない(合掌)

 

 

 

 


2010.8.20

 

 

 

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シーズン1の18話の和馬の誕生日話の後日談。

 

本編でうっかり書き忘れたので(笑)

せっかく図書カードの使い道のオチを考えていたのに、本編に載せ忘れるとは(笑)

 

ロゼから和馬へのプレゼントのメインはマイクロチップだったので、おまけの図書カードは彼女自身のために使うことになったようです(笑)

でもちゃんと、京都の地図は買うあたり、和馬も意地ですね(笑)

  

 

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