冬の醍醐味

 

 

 

 

「ふぁ〜あったかーい!!」
「コレはやっぱり日本独特のものよね」
「でも、結構破壊的な魔力を持ってるんだよなぁ、コレ・・・・・・」
ぬくぬくと3人が固まって囲んでいるのは、コタツ。
寒い時こそ恐ろしいほどの拘束力を持つ、魔法の暖房器具。

 


特に、日本でそんなぬっくぬくの生活などしたことなどないロゼは、コタツ体験にものすごく興味を抱いたようだ。
「コタツってなかなか強力な魔力を持っているわね。ここから出るのは相当の強い意志が必要だわ」
「なんか、コタツひとつにあんたがそこまで言うのも変な感じだな・・・・・・」
真剣な表情で語るロゼに、思わず和馬はそう言わずにはいられない。
まさか、裏世界の人々が恐れるスナイパーがコタツに意志の強さを試されているなんて、誰が想像できただろうか。

 


「コタツはいいよね〜、動きたくない〜」
勉強道具を広げている愛良もまた、そんなコタツのぬくぬくとした魔力に堕ちてしまい、とろん、とした目でそんなことを言っている。
「コラ、愛良。おまえは勉強するんだろ?」
「そうなんだけどぉ、なんかあったかいとやる気が出なくて〜・・・・・・」
「ったく・・・・・・」
ぬくぬくとしている愛良を眺めて、和馬は苦笑交じりに呟く。
「コタツというのは、日本人の冬の醍醐味よね」
「そうだね〜。冬はおうちでぬくぬくするのがいいよね〜」
「小学生はもっと外で遊んでるもんだと思うけどな?」
「え〜やだよ、寒い〜」
「そうよ、ナイト。そんな意地悪なことを言って、プリンシアが風邪をひいたらどうするの?!」
唇を尖らせる愛良の横で、ロゼが怒りの視線を和馬に向けるものだから、思わず彼は焦ってしまった。
「じ、冗談だよ」
・・・・・・だが、実際に冬だって外で遊んでいる子供はたくさんいるはずだが・・・・・・。

 


とはいえ、和馬もまた、コタツから抜け出せなくなっている魔法の虜になったひとり。
ぬくぬくしながらうれしそうに会話をしている愛良とロゼを眺め、「平和だな〜」なんて思う。
今日は怪盗夜叉の仕事もない。
のんびりと1日を過ごすことができる。
こうしてこのまま、1日中コタツに潜るっていうのも幸せな時間かも。


そんなことを思いながら、ごろんと横になる。
横たわれば、コタツの魔力はより一層強力になる。
暖かな温度に体中が包まれ、愛良とロゼの会話をBGMにうつらうつらとうたた寝をしようとした和馬だったが・・・・・・

 

「ナイト、大変、起きて頂戴!!」

 

突然、ロゼに身体を揺すられて起こされた。
「・・・・・・なんだよ?」
「早くコタツから出て。準備をするのよ」
「・・・は?」
「もうすぐそこまで来ているわ」
「だからいったい、何の話を・・・・・・?」
ぐいぐいと腕を引っ張られながら、わけもわからず首を傾げる和馬。
ロゼはなぜか焦りながら、自分はコタツに入りながら和馬をそこから引っ張り出そうと腕を引いている。

 

「ロゼ?どうしたの?」
「すぐそこまで目的のブツが来ているのよ。ナイトに動いてもらわないと」
「目的のブツ?」
ロゼの焦り様に思わず愛良も声をかけるのだが、ロゼの返答はやはり意味がわからず、愛良も和馬も首を傾げる。
「ロゼ、一体何の話をしているんだ?!」
「あらいやだ、ナイトってば。聞こえないの?」
「聞こえない?何が?」
「よく耳を澄ませて。そろそろもう、この家の傍まで来ているから聞こえてくるはずよ」
「へ・・・・・・?」
よくわからないが、ロゼに言われるがまま、和馬も愛良も耳を澄まして、家の外の音を拾おうとする。
すると・・・・・・

 

 

「いしや〜きイモ〜。石焼きイモ〜イモッ!!!あったかい石焼イモはいがかですか〜」

 

 

真冬の閑静な住宅街に広がるのは、石焼きイモ売りのスピーカー音。
「あぁ、大変、やはりもうすぐそこまで来ているわ!!」
そして焦っているロゼ。・・・つまり。
「・・・ロゼ、まさか俺に石焼き芋を買いに行けってことか・・・・・・?」
このぬくぬくのコタツから和馬を引っ張り出そうとしているその理由とは・・・・・・。

 

ジト目で和馬がロゼに尋ねれば、ロゼはにっこりと笑みを返してきた。
「もちろん、その通りよ、ナイト。だから早く買いに行ってきてちょうだい」
「・・・・・・オイ」
「あら、だって石焼きイモだって冬の醍醐味でしょう?ねぇ、プリンシア?」
「うん、石焼きイモ食べたい〜!!コタツで食べるアツアツの石焼きイモなんて贅沢〜!!」
愛良もコタツの中でうきうきとそう答える・・・が、和馬は納得がいかない。

 


「だったら食いたいヤツが行けばいいだろ。俺はコタツから出たくないね」
「・・・・・・ナイト」
プイっとそう言い捨てて再びごろ寝を決め込んだ和馬の背後から、ぞっとするようなロゼの声が聞こえた。
・・・おかしい、コタツの中にいるのに、ものすごい寒気がする・・・・・・。

 

恐る恐る顔を上げてみれば、そこには素敵無敵な最強の笑顔を向けて微笑むロゼの姿があった。
「ナイト、冬の醍醐味はコタツと石焼きイモよ?プリンシアだって欲しがっているでしょう?でもね、プリンシアをこの寒空の中、たかが焼きイモのためだけに出したくはないのよ?」
石焼き芋を食べたいといいながらも、『たかが』と言ってのけるロゼ。
だが、誰もその矛盾を指摘できるような勇者はいない。
「ね?わかるでしょう、ナイト」
にっこり笑顔。
もちろん、ロゼ本人がコタツから出るなんて選択肢は始めからない。
ということはもちろん、最初から和馬しかいなかったのである。
しかも、和馬には「断る」という権利もない。

 

「早くしてね、ナイト。もしも買い損ねるなんてことがあったら・・・・・・」
「い、行きますよ、行ってきます」
慌ててコタツから抜け出してリビングを後にする和馬。
なぜコタツにいながら、殺気を向けられなければならないのだろうか・・・・・・。
しかし、どうやらコタツの魔力もロゼの殺気には負けたようである。
あんなにもコタツの虜になっていた和馬をあっさりと解放させてしまった。

 


そして、あらゆる矛盾と不条理を胸に抱き不満をぶつぶつと口の中で呟きながら、和馬は石焼き芋を求めて寒空の中走るのであった。

 

 

2010.10.29

 

 

 

 

 

 

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冬と言えばコレかな、と思いつき書いてみました。

じつは、10月末に拍手用の小話が一気に3話分できあがったのです(笑)なにが降臨したのだか(笑)

ですが、それ以降、降臨してません(12月末現在)

 

次の小話を書けたら更新しようと思って拍手話の更新をしていなかったのですが・・・・・・あまりに降臨しないので諦めて更新することにしました(笑)

 

さて、コタツのお話ですが、じつは紫月の家にはコタツはありません。

昔、祖母の家にあったおぼろげ〜な記憶を頼りに書いてます(笑)

時期としては、まだ愛良が小学生の頃のお話です。

 

 

 

 

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