寝顔

 

 

 

みなが寝静まった深夜。
少女の部屋に忍び寄る影。
そろりそろりと、その部屋で眠る少女を起こさないように近づいてきた影が、そっと彼女の寝顔に何かを近づけた。
―――――――パシャっ。
一瞬だけ光った明かりと音に、少女が穏やかな寝顔を歪めるが、それもすぐにまた元に戻る。
息をつめていた影は、その様子を見守り、ニヤリと笑うと、そのまま部屋を後にした。

 

 

「あ〜!!!」
「・・・なんだよ、宗次、うるさいな・・・・・・」
ただ寝てるだけの大学の講義も終り、さて、里奈たちと合流しようかといったところで、宗次が突然大声をあげた。隣にいた和馬は、突然の彼の大声に、心底迷惑そうに尋ねる。
「ケータイの電池、切れちまった・・・・・・。あ〜あ、昨日充電忘れたからな〜」
「昨日はケータイが活躍だったしな。なのに充電忘れるなんてアホだな〜」
「どーせ、どーせ」
べーっと舌を出しながら、宗次は拗ねてそう答える。
昨夜は彼らの裏稼業、怪盗夜叉の仕事があったのだが、通信機だけでなく携帯も駆使しての通信手段だったので、昨夜は携帯も大活躍だったのだ。

 

恨めしげに電池の切れた携帯を見つめる宗次に、和馬がくすくすと笑う。
「で?里奈に連絡すればいいのか?」
「おう。あ、でも里奈に聞きたいこともあるから、ちょっと携帯借りてもいいか?」
「あぁ、別にいいけど?」
ズボンのポケットから携帯を取り出し、和馬は宗次にそれを手渡す。
宗次は携帯を開いて、里奈に電話をかけようとしたのだが・・・・・・思わずその手が固まった。
「宗次?」
固まったままの宗次を訝り、和馬が呼びかけると、ニヤニヤ笑いを張り付けた宗次が和馬に振り向いた。
「な、なんだよ、宗次、気持ち悪い・・・・・・」
「か〜ずくんってば、こんな写メを待ち受けにしちゃって〜」
「へ?・・・あぁ、それか」
和馬の携帯の待ち受け画面を見て固まった宗次。

 

そこに写し出されていたもの。
それは、愛良の寝顔。

 


「ちょっとちょっと、かずくん?!いつのまに君たちは寝顔を待ち受け画面にしちゃうほど関係が進展したわけ?!とうとうかずくんはロリコン道をまっしぐらに突き進むことにしたってか?」
「・・・・・・宗次、そのぺらぺらうるさい口を閉じろ」
「・・・・・・ふ、ふひまへんれひた・・・・・・」
びよーん、と和馬に頬を伸ばされ、とりあえず宗次は和馬に謝っておく。
が、やはりこの疑問には答えてもらわないと納得できない。
「でもよ〜、なんで愛良の寝顔?まさか、一緒に寝ちゃってる仲なわけ?」
「んなわけないだろ?昨日、<仕事>終わってから愛良の部屋に忍び込んで撮ってやったんだ」
「・・・・・・かずくん、寝顔盗撮するほど愛良に飢えていたなんて・・・・・・」
ヨヨヨヨ・・・と泣き真似をする宗次の脳天に、今度は和馬の鞄が降ってきた。声も上げられずに痛みの叫びを堪える宗次に、和馬は携帯を振りかざしながら訳を説明した。

 


「この間、明け方までかかった<仕事>あっただろ?」
「あ、あぁ・・・あれな」
「あの日の朝、愛良が俺を起こしに来たらしいんだけど、さすがに疲れてた俺は気付かなかったんだよ。で、何を思ったのか、愛良が携帯で俺の寝顔を撮りやがって、そのままあいつは自分の携帯の待ち受け画面にしやがったんだぜ?も〜それを知った時の羞恥なんて、並みじゃないぜ?慌てて消したけど」
「・・・・・・じゃぁ、和馬が愛良の寝顔を待ち受けにしてるのは・・・・・・それの仕返し?」
「そ。愛良が見たら、恥ずかしくて泣き叫ぶだろうからな。やられたらやり返して、教訓として叩きこまないとな」
「・・・・・・まぁ、たしかに愛良は泣き叫ぶだろうけど・・・・・・」
恥ずかしくではなく、歓喜だと思う、と宗次は心の中で付け加えておく。

 

なにやら和馬は愛良へのいたずらが成功したと思って喜んでいるが、そんなことを和馬がしていると知ったら、愛良のことだ、
「和馬お兄ちゃんが、あたしの写真を待ち受けにしてくれたんだよ!!」
と喜んで周囲に触れまわるに違いない。
そして、和馬がその後ろを慌てて追いかけて訂正してまわるのだろう。
・・・・・・うん、おもしろい光景だ。
今後の展開を安易に想像できて、宗次は思わずにやける顔をおさえることができない。

 


「・・・それにしても・・・」
「ん?なんだ、宗次?」
「あ、いやいや、別に・・・・・・」
ふと浮かんだ事実に、思わず宗次は呟いたが、すぐに首を横に振った。
それにしても、怪盗を始めてあんなに人の気配に敏感になった和馬が、愛良に起こされても起きずに、しかも気付かなかったなんて・・・・・・。
宗次たちと外で寝泊まりしているときでさえ、彼らが起きたり動いたりすれば、飛び起きるのに・・・・・・。
愛良のときは、そうではなく、熟睡していたってことで・・・・・・。

 


「・・・まぁ、そもそも、寝顔を撮り合いっこしてる段階で、フツーにバカップルだな」
「あ?なにか言ったか?」
「いーえ、なにも。それよか、早くケータイ貸してちょ、かずくん。里奈に連絡するんだから」
「ハイハイ。借りるクセに態度でかいな」
「どーも、スイマセンね」
くすくす笑いながら、宗次は里奈の携帯の番号を押す。
この話はぜひとも里奈にも実にも伝えなければ。
ロゼやジョンはもちろん、知っているだろう。

 

これから起こるであろう、愛良と和馬の珍騒動を想像し、宗次はひとり、笑いをこらえられずにいた。


ちなみに、愛良の寝顔はロゼの携帯の待ち受け画面にも登録されているのは、もちろん、周知の事実である。

 

 

 

2010.10.31

 

 

 

 

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は、恥ずかしいくらいのバカップル・・・・・・!!

ふと、電車の中で携帯をいじっているときに浮かんでしまったエピソード(笑)

日常の何気ない動作から、ついついこのふたりならどうするかな、と考えてしまう自分がいます(笑)

 

時間軸としては、すでに愛良は中学生になっている予定のものです。だから、宗次が里奈に電話をしつつ、実にも伝えようと思っているのです。実はすでに和馬たちと同じ大学に通ってますからね。

 

だけど、実際2010年10月時点では、HP上ではまだまだ愛良は小学生だったんですけどね(笑) 

 

 

 

 

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