あなたが生まれたワケ

 

 

 

 

 

その夜、唐突にその話題をふってきたのは、やはり例のごとく、今年の春から中学生になった、愛良だった。

「ねーねー、『あなたが生まれてきた理由』って知ってる?!」

これから悪戯を始める子供のごとく、瞳をキラキラさせながらこちらを見上げてくる愛良に、その場にいた全員が目を瞬かせる。

 

 

ちなみに、今夜はたまたま全員が揃って夕飯を囲むことになり、加えて宗次たちまで乱入してきたため、リビングは人で溢れている。

一応客である宗次たちはリビングのソファーに、和馬、ロゼ、ジョンはテーブルに肘をつきながら、雑談を交わしていた。

そんな中、うきうきと部屋からノートパソコンを取りに戻ってきた愛良は、先程のようなことを突然言い出したのだ。

・・・この少女の突然の思いつきには、すでに全員免疫はできているが。

 

 

 

 

「『あなたが生まれてきた理由』だぁ?!なんだ、愛良、そんな宗教みたいなのにハマってるのか?!」

「違うよ、宗次お兄さん。今クラスでね、そういう占いみたいなのが流行ってるの!!『あなたが生まれてきた理由』を教えますっていうの!!」

ほら、と彼女はそのサイトを写したパソコン画面を宗次に差し出す。へぇ、なんて宗次はそれを覗きこんでいるが、その横で和馬はほっとその様子を眺めていたりする。

「・・・なんだ、シリアスなことじゃないんだな」

「あら、真剣に『あなたが生まれてきた理由』を聞かれたら困るのかしら、ナイト?」

ぽつりと呟いた和馬の言葉に、ロゼが意地悪く笑いながらそんなことを問い返してくる。

「・・・・・・それってお互い様だろ」

「まぁ、そうね。それに、私がここに生まれた理由は、私が決めるからいいのよ」

「・・・・・・へぇ、ソウデスカ・・・・・・」

さらっときっぱりとにっこりとロゼが言い切るので、和馬もそれ以上は何も言い返さない。さすがと言うかなんというか、納得の返答である。

 

 

 

 

そんなやりとりをしている最中でも、愛良たちの方ではすでに楽しそうに会話が続けられている。

結果はどうあれ、なにやら楽しそうな雰囲気に好奇心が疼いた和馬は、立ち上がってソファーの方に近づいた。

「なんだ?なにか面白いことでもあったのか?」

「えへへ、和馬お兄ちゃんの名前でやってみたの」

「おまえなぁ、勝手に人の名前で・・・・・・。で、なんだって?」

くすくす笑う愛良を軽く睨んでから、結果を読もうと覗きこもうとしたら宗次に止められた。

「まぁまぁ、かずくん、焦るなよ。俺が読みあげてやるから」

「・・・なんでそんなにうれしそうなんだよ、宗次」

「ふっふっふ!!瀬戸 和馬くん、君が生まれてきた理由・・・・・・それは、『あったかいお風呂に入るため』です!!」

「はぁ?!」

げらげら笑い転げる宗次。結果の内容を聞き、実たちまで笑っている。・・・なるほど、先程和馬がひとりでパソコンの画面を覗きこもうとしたのを止めたのは、この場にいるみんなに結果を聞かせるためだったらしい。

・・・それにしても、『あなたが生まれてきた理由』という大袈裟なテーマの割に、なんと陳腐な理由なんだろうか・・・・・・。

 

 

 

 

「くっくっく、かずくんはあったかい風呂に入るために生まれてきたんだねぇ。こりゃ、日本中の温泉巡りでもしなきゃねぇ〜」

宗次が未だ笑いをおさめられずに笑っている。その横で笑う愛良に、和馬は言った。

「愛良、宗次の『生まれてきた理由』も調べてやれよ」

「あ!!かずくん、なんてことを!!」

「ヒトの結果を勝手に笑っといて文句言うな」

「は〜い、宗次お兄さんの結果も出たよ。えっと、宗次お兄さんの生まれてきた理由は、『誰かがあなたの体を食べるためです』だって」

「・・・・・・どう、コメントすべきなんだ?!」

「なかなか興味深い結果ね」

「宗次らしいといえば宗次らしいね」

「でも食べられる側なんだ〜。意外だなぁ、食べる側だと思ったけど」

和馬の呟きを筆頭に、ロゼ、実、ジョンがそれぞれの感想を述べる。当の本人である宗次は、ニヤニヤ笑いながら里奈の肩を抱いて引き寄せた。

 

 

「へ〜、俺って食べられるらしいよ、里奈ちゃん?」

「へ〜、それはおいしくなさそうね」

「そんなこと言わずに食べていいからね、里奈ちゃん」

「だ、だめだよ!!」

完全にエロオヤジ化した宗次が里奈に絡んでいると、愛良が慌ててそれを止めてきた。

「宗次お兄さんを食べちゃだめだよ、里奈お姉さん?!宗次お兄さん、死んじゃうよ!!」

「「・・・・・・へ?」」

真剣そのもので里奈に訴えてきた愛良の剣幕に、里奈も宗次もきょとんとしてしまう。が、すぐに愛良の意図はわかった。

この純真無垢な少女は、文字通り、宗次が食べられると・・・・・・牛肉や豚肉を食べるがごとく、宗次の肉も食べられてしまうことを想像したらしい。

「・・・・・・愛良、おまえは変わらずそのまま成長しろよ」

「いやいや、そこはおまえが教えてやればいいんじゃないか、かずくん」

ぽんっと愛良の肩を叩いてしみじみと言った和馬に、宗次が茶々を入れる。

愛良は訳が分からずにふたりを交互に見返したのだが、納得のいく返答はもらえなさそうだと判断したらしく、何やらパソコンをいじりはじめた。

 

 

 

 

「ん?次は誰のを調べてるんだ、愛良?」

「怪盗夜叉の『生まれた理由』を調べてみるの!!」

「か、怪盗夜叉の?!」

ぎょっとしたのは和馬だけではなく、宗次や実、里奈もだ。ロゼとジョンは興味深そうに愛良のパソコンを見つめている。

わくわくした様子でパソコンに怪盗夜叉の名を入力した愛良は、その結果に笑みをこぼした。

「・・・・・・なんて書いてあったんだ?」

怪盗夜叉を代表して和馬がそう尋ねる。すると、愛良は微笑んだまま柔らかな口調で答えた。

「怪盗夜叉が生まれた理由はね、『こどもたちの笑顔を見るため』だって」

「・・・・・・へぇ〜・・・」

しぱしぱと目を瞬かせながら宗次がそう返事をした。

里奈は何やら言いたげに苦笑を洩らす。

実もまた苦笑を浮かべながら、和馬に視線を向けた。

そして和馬はと言うと、こちらは苦笑というよりも自嘲気味な笑みをうかべていた。

 

 

 

 

犯罪者である怪盗夜叉の生まれた理由が、こどもたちの笑顔を見るためとはなんとキレイごとか。

愛良は怪盗夜叉を心底信仰していることもあり、そんなお綺麗ごとな結果に大満足だったらしく、にこにこと笑みを浮かべている。

怪盗夜叉と同じアンダーグラウンドの住人であるジョンやロゼは、そんな愛良の様子を見守りながら何事もなかったかのように笑っている。

同じ怪盗夜叉をやっている宗次たちの反応はもっともだ。

怪盗といえば聞こえがいいが、所詮は犯罪者。それなのに、こどもの笑顔を見るためとは偽善も甚だしい。

 

 

 

 

和馬がそんなことをぐるぐると考えていると、満足げな愛良が彼に向かって笑いかけながら言った。

「やっぱり夜叉は、誰かを喜ばすためにいるんだね。夜叉はいつも何かを盗むけど、絶対にそれを返すし、じつは悪者から盗品を奪って、所有者に返してるときもあるもんね。テレビの中では偽善者だ、とか言う人もいるけど、夜叉が自分の利益のためだけに動いたことはないから、やっぱり夜叉はただの偽善者じゃないよ」

力強く、愛良は和馬にそう告げる。

彼女は知らないのに。

彼が・・・・・・彼こそが、その怪盗夜叉であることを。

それなのに、思考が沈んだ和馬を励ますように、説得するように、力強く愛良は言う。

 

 

 

「ね?和馬お兄ちゃんもそう思うでしょ?」

にっこりと笑って無邪気にそう尋ねてくる愛良。

それにはもう、和馬も苦笑を浮かべるしかなかった。先程のような自嘲気味なものではなく、少し諦めたような柔らかな笑みを。

 

 

 

「・・・・・・そうだな」

そうだといい、と思ってしまう。

愛良が見ているもの、聞いているものがすべてではないが、それでも、そうであればいいと。

怪盗夜叉がいるだけで、たったひとりでも笑顔になってくれる人がいてくれればいいと。

いつの間にか、闇が広がりつつあった和馬の心の中は、再び暖かさを取り戻していた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・すげぇな、愛の力って・・・・・・」

思わずといった感じで呟く宗次の言葉に、里奈も感動的に頷く。

ジョンとロゼはくすくすと小さく笑っている。普段から仲の悪いふたりだが、やはり思考回路は似ているのか、反応は一緒である。

実もまた、愛良の強く輝く『光』の存在に、安心感を抱いていた。

「本当に、愛良ちゃんはすごいね」

 

 

 

かくして、『あなたが生まれた理由』という占いゲームのお陰で、和馬の中で広がりつつあった暗闇の部分が、愛良の力によって再び光を取り戻したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2011.1.22

 

 

 

 

*********************************************

 ちょっとシリアス度が強めですかね?

ただ単に、思いつきで書き始めただけなので(笑)このサイトさんを見かけたときに「これだ!!」と思わず書き始めてしまいました(笑)

 

本当は全員分載せたかったのですが、そうすると、WEB拍手番外編どころか、普通の番外編になりそうでしたし、まさかこのネタでそんなに長く引っ張るのもどうかと思ったので(笑)

 

なので、一応、残りのメンバーの『あなたが生まれてきた理由』を載せておきます!!

ちなみに、ロゼは姓を考えていないので、ロゼのままで。

 

*須藤 実・・・・・・「こたつの中でぬくぬくするため」←まぁ、なんと和馬と似たり寄ったり(笑)ふたりで温泉旅行にでも行ってください(笑)

*天野 里奈・・・・・・「この世の悪と戦うため」←また里奈も複雑な表情を浮かべるしかないような結果に(汗)宗次という煩悩の悪を退治してあげてください(笑)

*ロゼ・・・・・・「世界を幸せの光で包むため」←ど、ど、どうしましょう?!すごい結果が出ましたが(汗)ロゼ基準の幸せとは、愛良中心で回る世界のことでしょうか(笑)

*ノワール・・・・・・「ふとんの中でぬくぬくするため」←夜に活動されているというのに、ふとんでぬくぬくとは・・・・・・。引退したらいっぱいぬくぬくしていただきましょう。

*ジョン・ベラルディ・・・・・・「おいしいものを腹いっぱい食べるため」←大爆笑。そうでしょうとも、きっとジョンはおいしいものをいっぱい食べたいんでしょうね(笑)

*新田 静子・・・・・・「少子化対策のため」←お忘れかもしれませんが、しずちゃんの本名です(笑)なんと、しずちゃんは少子化対策のためという、社会のために生まれてきてくれたんですね!!愛良に構っている場合じゃないですね(笑)

*渡辺 修登・・・・・・「お葬式屋さんが儲けるため」←涙・涙・涙・・・・・・。修登くん、お葬式屋さんが儲かるために生まれてきたなんて・・・つくづく運のない子だ・・・。

 

 

やりだしたらキリがないのでこれくらいで(笑)

結構楽しめたりします(笑)まさか、ロゼがそんな意味を持って生まれてくるとは思わずにびっくり(笑)

一方で、修登の理由も妙に納得してしまいそうで爆笑でした(笑)

 

 

 

BACK

 

 

 

 

inserted by FC2 system