恋せよ、乙女たち!!

 

 

 

 

 

 

 

得てして、女子という生き物は、恋話が大好きな者が多い。

それは自分のものであれ、他人のものであれ。

特に、まだまだ恋に恋する年頃である小学生や中学生は、マンガの世界から飛び出したかのような王子様との恋物語に夢を馳せるのである。

そうして、ここにも夢物語のような設定に大興奮する女子たちがたくさんいたりする。

 

 

 

 

「え〜?!柳井さん、カレシがいるの?!」

突然響いた叫び声に、教室内の女子たちが一斉にこちらに振り返る。

問われた愛良は、得意満面の笑みで頷いた。

「うん、8歳年上でね、一緒に暮らしてるの」

「えぇ?!そ、それって同棲?!」

「そうなの!!もう、将来を誓い合った仲なんだから」

「え〜!!すごい〜!!」

愛良のとんでもない話に、次々とクラスメイトが食い付いてきて輪を作る。

 

 

ここは女子校。そして、愛良たちは入学したての中学一年生。

クラスメイトといっても、まだお互いのことを何も知らない彼女たちは、世間話をするように話をしている最中、愛良の恋愛話を聞いて、思わず食い付いてしまったのだ。

 

 

 

「いつ、どうやって出会ったの?!」

「ん〜とね、もう1年前かなぁ。高校生にカツアゲされそうになってたところをね、助けてくれたの!!」

「すごーい、かっこいい〜!!それでそれで?!どうやって同棲まで持ち込んだの?!」

「ちょうどパパとママが海外で暮らさなくちゃいけなくなっちゃって。でも、あたしは日本にいたかったから、和馬お兄ちゃんのところで暮らすことにしたんだ」

「それで、カレシになったの?!一緒の部屋で寝てたりとかしてるの?!」

「ううん、和馬お兄ちゃんはね〜硬派だから、そういうことはないんだよねぇ。でも、毎日あたしの手料理を食べてもらってるんだ〜」

えへへへ〜と幸せいっぱいに語る愛良の周りで、興味津津のクラスメイトたちは目を輝かせて愛良に次々と質問を浴びせる。

幸せモード全開の愛良は、ひとつひとつにノロケを交えてちゃんと答えていた。

 

 

 

「それにしてもいいなぁ〜8歳年上のカレシなんて・・・・・・」

「ね〜。オトナだもんねぇ。いいなぁ、柳井さん」

「親も公認だったら、迷うことなんかないもんね」

まるでドラマのような愛良の恋愛話をひとりしきり聞いた後、クラスメイトたちはそんなことを口にした。

彼女たちにとってはちっとも現実味がないので、もはや夢のような恋愛話なのである。

<年上の彼氏><同棲><親公認>という、女子憧れの単語と夢が詰まった恋愛話をリアルに聞くことができるのだから、彼女たちは愛良に色々と質問してまわった。

すると、きゃぁきゃぁとうれしそうに騒ぐ彼女たちの輪の外から、冷たい一声がかけられた。

 

 

 

「バッカみたい。それって、全然恋人なんかじゃないじゃない」

 

 

 

冷ややかに放たれた言葉の主に、一斉に視線が集まる。

視線を集めた彼女は、刺々しい口調で愛良に言い募った。

「それって、全然恋人同士なんかじゃないじゃない」

「なんで?!あたしと和馬お兄ちゃんは恋人同士よ?!」

指摘されてむっとした愛良は、少しムキになって言い返す。だが、言い返された彼女の方は、それでも至って冷静に愛良に言った。

「でも、恋人同士なのに、『和馬お兄ちゃん』なんて呼んでるんでしょ?変じゃない?!」

「そ、それは・・・・・・」

図星だった愛良は勢いをなくす。それに気を良くした彼女は、さらに畳みかけるように、愛良を指さし、声高々に告げた。

 

 

 

 

 

「それに、恋人同士なら、毎日<おはようのキス><いってらっしゃいのキス><おかえりのキス><おやすみのキス>は欠かさないはずよ!!!」

 

 

 

 

 

 

びしぃっという効果音さえ背後にありそうな勢いで、自信満々に言い放った彼女は、大変満足そうに鼻息荒く胸を反った。

一方、愛良を囲む女子たちは、彼女の剣幕に度肝を抜かれていたものの、一瞬の沈黙の後、全員が納得顔で力強く頷いた。

彼女の主張が、受け入れられた瞬間である。

 

 

 

対する愛良はというと、告げられた衝撃発言に、よろりと体を傾かせた。

「た、たしかに・・・・・・そうかも・・・・・・」

そして、愛良も納得してしまったのである。

所詮、中学一年生。恋に恋する乙女たちの主張である。

 

 

 

 

だが、愛良はここで終わらなかった。

和馬と<列記とした恋人同士>となるべく、1日中彼を追い回し、4つの挨拶のキスを強請り続けたのである。

 

 

 

 

中学生の乙女たちの暴走はまだまだ続くのであった・・・・・・たぶん。

 

 

 

 

 

 

 

 

2011.1.31

 

 

 

 

 

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 なんというか、ここまでアホな話を書くのも久しぶりで、すごい楽しかったです(笑)

このくらいの年頃って、なんでもいいから恋愛話が楽しかった気がしたので(笑)

 

あの場にしずちゃんが同席していたら、なにかしら冷静なツッコミをしてくれたかもしれないのですが、あいにくの不在であったため、類は友を呼び、愛良と同類の恋に生きる女子たちの恋話だったようです。

 

その後、愛良が和馬にせまりまくる後日談を付け加えようかどうしようか散々迷ったのですが、たまには短くコンパクトにまとめてみることにしました。

時期としては、愛良が中学に入学したての頃の話です。本編ではあまり触れられない、愛良の日常を番外編で書いていきたいと思ってますので(笑) 

 

 

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